【解説のページ】

3.社内与信基準参照 4.取引可否判断


あらかじめ与信管理の事前準備の「取引可否判断」のプロセスで既に格付毎の取引可否の一律の判断基準は作成済みですので、新規取引の際には、「分析・評価」の結果判定された信用度をその判断基準に当てはめて判断します。
取引可能との結果が出た場合は、次にこれも事前準備の「与信限度額設定」で設定した与信限度額ロジックに必要データを当てはめます。
このように社内で一律の基準及び計算方法を設定しておけば、個々人の判断のブレがなく、標準的に全取引先の可否判断及び与信限度額計算を効率的に処理することが出来ます。

「事前準備」に当る部分については、以下となります。

<取引可否判断>
「社内与信基準作成」では、取引可否判断基準などを作成します。
取引可否判断基準は、新規取引先及び既存取引先に対して、@取引をするか否かA取引をするならばどのような条件を設定するのか、ということを格付を元に判断する方法になります。
自社の全取引先の格付別の分布状況や取引金額と格付の関係などを考慮した上で基準となるラインを格付毎に設定します。
最終的には、以下のような一律基準に落とし込みます。

格付 既存取引先
取引可否判断 取引条件
1 取引可能  
2 取引条件あり 請求後2ヶ月以内の回収
3 取引条件あり 請求後1ヶ月以内の回収
4 取引条件あり 現金取引のみ
5 取引不可 -


取引条件には、自社の業種・業態や取引状況に応じて、回収期間のほかに、保全方法、決裁責任者、契約書の特約、販売価格等の各種条件が入ります。

<与信限度額ロジックの作成>
与信限度額の設定方法については、「与信限度に正解なし」と言われる通り、各社各様でさまざまな方法があります。業種や商習慣などにより、そのロジックのつくり方は様々です。具体的には、自社属性を基準とした方法や相手属性を基準とした方法などを採用するのが一般的です。
以下は一般的な与信限度額の設定方法の例です。
□自社属性を基準とした方法
    ・ 販売目標管理法 → 自社の担当者とトップとの話し合いで取引先売上目標を回収サイトによって限度額を設定。
    ・ 段階的増枠法 → 新規取引時にやや低めの限度額を設定し、取引振りや経営内容から漸次限度を増額する方法。
    ・ 同種企業比較法 → 取引先の企業から標準企業を選定し、この企業の限度額を設定して、これと比較して個々の取引先の限度を設定する方法。
    ・ 売掛能力の一割法 → 自社の売上債権総額の10%程度を与信限度額とする方法。
    ・ ………
  □相手属性を基準とした方法
    ・ 取引先仕入基準法 → 取引先の貸借対照表における仕入債務の何%かを任意で設定し、これを与信限度額として、限度額を10%から徐々に上げていく方法。
    ・ 内部留保基準法 → 取引先の自己資本の10%以内を基準として与信限度を決める方法。
    ・ 月商の一割法 → 取引先の平均月商の10%程度を与信限度額としておけば、いざという時に容易に商品が引き上げやすいという方法。
    ・ ………
このガイドラインでは、こういった一般的な手法の良さを取り入れ、リスクの度合いが考慮される方法を採用しています。
特徴としては、代表的な「自社属性を基準とした方法」と「相手属性を基準とした方法」のうちから4つのチェックロジックを使用し、更に信用度を加味した与信限度額を算出する方法となります。
4つのチェックロジックは、「希望与信額」、「財務上限基準 → 自己資本×一定割合」、「売上債権基準 → 自社売上債権×一定割合×重み付け」、「仕入債務基準 → 推定仕入債務×一定割合×重み付け」になります。
一覧表示は以下です。

@ 希望与信額
A 財務上限基準=自己資本×一定割合
B 売上債権基準=自社売上債権×一定割合×重み付け
C 仕入債務基準=推定仕入債務×一定割合×重み付け
D @〜Cのうちの最小値を与信限度額とします。

上表の@〜Dの内容については以下となります。
@ 「希望与信額」とは、取引先との取引希望額に回収条件を加味して、ピーク時における債権残高を推定した金額になります。例えば、毎月3千万円の取引を希望し、回収サイトが2ヶ月ならば、希望与信額は6千万円になります。
A このチェックロジックは、焦付きが発生した場合に自社の財務体力で耐えうる金額をあらかじめ設定し、その金額に一定割合を乗じて、1社に対する売上債権金額を算出します。例えば、自己資本が3億円だった場合に、その10%までなら耐えうるということであれば、1社に対して許容される債権額は、3億円×10%=3千万円 ということになります。なお、この場合の割合設定については、手元余裕資金や換金可能な流動資産などの金額をみて、現実的な範囲で任意設定します。
B このチェックロジックは、自社の販売方針や標準的な回収サイトなどから、「一定割合」を設定し、「1社に対する売掛債権を全体の何%まで許容するか」をまず算出します。例えば、自社の売上債権総額が3億円だった場合に、1社に対して許容する一定割合を10%と設定したならば、3億円×10%=3千万円 ということになります。次の「重み付け」は、その取引先の信用度によって、算出された金額を増減する倍率になります。
例えば、仮に重み付けの倍率を格付に応じて、以下のように設定します。
    1格(信用度厚)   → 1.5倍
    2格(信用度やや厚) → 1.2倍
    3格(信用度普通)  → 1倍
    4格(信用度やや薄) → 0.8倍
    5格(信用度薄)   → 0.3倍
これにより、仮に取引先A社が4格であれば、上記例で算出すると、
3億円×10%×0.8倍=2千4百万円ということになります。
Cこのチェックロジックは、取引先の仕入能力を推定し、その能力の「一定割合」にまで自社の債権を保有しないというロジックになります。つまり、「相手先の仕入債務のシェアの何%まで許容するか」ということになります。例えば、取引先の仕入債務の推定値が5億円だった場合に、1社に対して許容する一定割合を10%と設定したならば、5億円×10%=5千万円 ということになります。次の「重み付け」は、その取引先の信用度によって、算出された金額を増減する倍率になります。
  例えば、仮に重み付けの倍率を格付に応じて、以下のように設定します。
    1格(信用度厚)   → 1.5倍
    2格(信用度やや厚) → 1.2倍
    3格(信用度普通)  → 1倍
    4格(信用度やや薄) → 0.8倍
    5格(信用度薄)   → 0.3倍
これにより、仮に取引先A社が4格であれば、上記例で算出すると、
5億円×10%×0.8倍=4千万円ということになります。
D最後に1〜4までの金額を比較して、最小となる値を与信限度額とします。上記例では以下となります。
  1. 6千万円
  2. 3千万円
  3. 2千4百万円
  4. 4千万円
1〜4の最小値=2千4百万円 が与信限度額ということになります。
なお、3及び4について、「重み付け」の方法については、格付ごとの倒産発生率を使用することで、精緻な計算が可能となります。
例えば、仮に各格付の倒産発生率が以下だったケースを考えてみます。
  1格(信用度厚)   → 0.1%
  2格(信用度やや厚) → 0.5%
  3格(信用度普通)  → 1%
  4格(信用度やや薄) → 2%
  5格(信用度薄)   → 5%
この例で言えば、3格を基準とすると、5格は5倍の危険度があることになります。従って、「重み付け」としては、5分の1になります。反対に信用度の厚い1格であれば、10分の1の危険度となりますので、「重み付け」は10倍ということになります。
「重み付け」の計算式は、以下となります。
重み付け=基準となる指標の倒産発生率 ÷ 当該取引先の評価された指標の倒産発生率
このように、取引先の格付ごとの倒産発生率などを使用することで、精緻な与信限度額計算を行うことが可能となります。

※上記格付けなどの例は、あくまで解説のための事例であり、そのまま使用できるものではありません(「一定割合」は自社の状況に合わせて設定し、「重み付け」については根拠となるデータを集計・分析した上で設定する必要があります)。



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