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【解説のページ】
1.情報収集
新規取引を行う際には、取引候補企業の情報収集を欠かすことは出来ません。与信管理は、「取引先の情報収集」→「信用度の評価」→「信用枠の設定」→「取引条件設定」→「情報収集・取引状況把握」(場合によっては→「緊急対応」)という基本サイクルを各企業について繰り返していきますので、新規取引の際には最初の「取引先の情報収集」をまずは行うことになります(与信管理の基本サイクルについては、「T.与信管理準備」の「序 与信管理とは何か」をご参照ください)。
以下では、基本的な情報収集の方法とチェックポイントなどについて解説します。
<一般情報>
@ ネット検索
最近では、自社情報の発信の場として、ホームページを持つ企業が非常に増えてきています。上場企業などの大半は、ホームページから決算情報などを入手することが出来るようになって来ました。また、取扱商品の案内なども充実した企業が増えてきています。取引を開始するに当っては、こういった自主的に公開している情報はまず入手するべき情報です。
ホームページの有無が信用度を測る尺度になるということでは必ずしもありませんが、積極的な情報公開は姿勢として評価できるということになります。情報の内容については、自社発表ですので誇張などがないとも言い切れませんが、多くのヒントを与えてくれる有力情報と言えます。
また、信用度の低下や製品に対するクレームなどについて、各種サイトで特定の企業が攻撃されることなどもありますので、参考情報として入手しておくこともネット検索では可能です。但し、この場合は、信憑性の薄い情報や意図的に捏造された情報などもかなり含まれているケースがありますので、取扱いには慎重さが必要になります。
A 登記情報収集
企業の信用度を測る上で、登記簿からの情報は重要です。
登記簿には、商業登記と不動産登記があります。
<商業登記>
会社として事業を営む際には、法律に則り、商業登記を行います。これにより、会社の基本情報が公開されるとともに社会的な信用の基礎を得ることになります。商業登記事項としては、商号、本店(住所)、会社設立の年月日、資本の額、役員に関する事項などがあります。公開された情報とこれらの届出情報との相違やその原因などを確認すると共に内容を精査し、信用度の評価に活用します。
商業登記事項のチェックポイントは以下となります(代表的なもの)。
□ 頻繁な商号変更はないか?
□ 商号に事業目的との整合性はあるか?
□ 身の丈に合った商号か?
□ 頻繁な本店所在地変更がないか?
□ 登記上の本店と営業実態のある実質面の本店に違いはないか?
□ 業種と本店所在地に整合性はあるか?
□ 事業目的が身の丈にあっているか? (実際に行っていないものがあまりにも多い場合は注意)
□ 事業目的のそれぞれに関連性はあるか?
□ 役員の顔ぶれはどうか?(同族か、問題人物はいないかなど)
□ 資本金の推移に問題はないか?
□ 債権譲渡登記の内容はどうか?
□ 休眠期間はないか?
□ ・・・・・・・・・
<不動産登記>
会社の信用度を評価する際には、資産背景が重要な確認事項となります。上場会社以外の企業にとっては、代表者の資産背景も資金調達余力を見る上での重要参考資料となります。不動産登記簿を確認することにより、保有資産の場所や面積、担保設定の状況などを正確に把握することが出来ます。
不動産登記事項のチェックポイントは以下になります(代表的なもの)。
□ 所有者は誰か?
□ 不動産の取得の時期はいつか?
□ 不動産の取得日と抵当権(または根抵当権)の設定日の関係はどうか?
□ 不動産の評価額と抵当権及び根抵当権の設定金額にブレははいか?
□ 根抵当権の設定者に問題はないか?(特に下位の順位)
□ 賃借権設定(請求権)の仮登記が成されていないか?
□ 仮差押登記(または差押登記)がなされていないか?
□ 所有権移転の仮登記はないか?
□ ・・・・・・・・・
<業者登録>
登記情報とは異なりますが、誰でもが閲覧できる「公簿」として、業者登録があります。建設業など業者登録が義務付けられている業種については、所轄の官公庁で業者登録内容を閲覧することができます。業種によっては、決算書の提出も義務付けられていますので、かなり有益な情報を多項目にわたって入手することができます。
B 社内関与部門面談実施
関与部門とは、自社において直接的に関与する部門ですので、一般的には営業部門ということになります。営業部門は成約に至るまで、または成約後のアフターフォローなどで何度も取引候補先に直接足を運ぶなかで、その会社の情報を入手(または確認)できる環境にありますので、その有力情報を活用します。
ここで「面談」という表現をする意味は、営業マンのほかに与信管理を実施する役割を担った部門(審査部門など)や管理職が存在することを想定しています。
C 業界情報収集
取引先の置かれた状況を把握するためには、関連する業界に関する情報が有効になります。現在その業界で何が起こっているかを把握することで、その取引先の先行き予測などに役立てます。同種の製品・サービスを取扱う企業が業界にはどの程度あって、その取引先がどのような位置づけにあるのかといったことを業界動向から把握します。
D 地域情報収集
中小企業のように比較的商圏が狭い場合には、近隣の同業他社の受注動向などがその取引先の業績に直結する場合などがあります。地域情報は、地域における企業同士の相関関係のような大きなものから、近隣の噂レベルの話まで有力情報が相当数入手できる可能性のある情報になります。特に近隣の同業他社は、批判的な目を持って見ていることが多いので、信用度に不安がある場合などの聞き取り調査が有効です。
E 顧客訪問
顧客訪問とは、営業担当者に審査担当者が同行するなどして、取引先に審査担当者が実際に取引先を訪問することを言います。定期的な訪問を通じて、取引先の変化の状況などを把握します(但し、訪問を受ける側の取引先が快く受け入れてくれないケースも多数あるので、実施時には相応の配慮が必要となることが多いようです)。
一般的には、営業マンと審査部門の情報収集の役割分担は以下のようにするケースが多いようです。
□ 営業マンの情報収集→取引先全般の情報、商材の品質や技術力・将来性など、営業力と販路の優位性など
□ 審査部門などの情報収集→取引先全般の情報(銀行や取引先への信用照会により得られるもの)、登記情報の入手・分析、決算書分析、同業者比較の分析情報
<外部機関情報>
@ 企業概要データ入手
取引を開始するに当っては、その企業の属性データを台帳形式で保有しておく必要がでてきます。その台帳に住所や代表者名、業績推移など企業概要のデータが掲載されていれば、いろいろな局面で活用することが出来ます。顧客データベースの基本となるデータです(帝国データバンクの企業概要データについては、こちらをご参照ください)。
A 信用調査報告書入手
信用調査会社に調査を依頼することにより、信用調査会社のプロの調査員が各方面から取引先の内容を確認し、情報の裏づけを取り、所見をつけた上でまとめた信用調査報告書を入手することが出来ます。これにより、第三者の客観的な判断が入った一定品質の情報を信用度の評価などに活用できます。上記<一般情報>の@〜Eまでの情報については、基本的に信用調査会社は押えていますので、信用調査報告書を入手することで、情報収集及び選別の時間短縮も可能となります(帝国データバンクの信用調査報告書については、こちらをご覧ください)。
B 財務データ収集
企業の信用度を評価する際に、決算書データは最重要に位置づけられる情報の内の一つですので、取引先に対しては決算書の提示を求めることが(建前上は)望ましい対応です。上場会社であれば、提示を求めなくても、有価証券報告書やホームページなどから公開された決算書を何期分も入手することは可能です。ただし、一般の中堅・中小企業については、公開マインドが低く、売り側の立場の方が弱いケースが圧倒的に多いので、話を切り出すことさえも出来ないのが現実です。
これに関しても、信用調査会社に依頼をすれば入手できる場合がありますので、特に非公開企業の財務データ入手に際しては、信用調査会社からの入手ルートなどが有効となります(帝国データバンクの財務データベースについては、こちらをご覧ください)。
決算書入手が出来る場合には、過去三期分以上の入手が理想的です。様々な分析を加える際にも、財務指標を算出する際には二期分以上あれば、その企業の財務体質をより正確に表すことができます。また、期毎の勘定科目の推移を知る上でも複数期の決算書が必要になります。
決算書のチェックポイントは以下となります(基本的な事項の一部)。
□ 貸借対照表の左右のバランスはどうか?(流動資産と流動負債、売上債権+棚卸資産と仕入債務+借入金、固定資産と固定負債+資本金など)
□ 保有資産の簿価と実価に差はないか?
□ (帳簿上または実質上)債務超過になっていないか?
□ 使途不明な勘定科目がないか、金額が大きくなっていないか?
□ (2期以上比較した場合に)貸借対照表の勘定科目の増減に不自然なところはないか?
□ 収益性は同業と比較してどうか?
□ 実質の借入利率は、営業利益率と比較して高くなっていないか?
□ 当期利益は本業に起因するものか?
□ 赤字決算は何年続いているか?
□ ・・・・・・・・・
C 格付データ収集
格付け機関の格付は、一般的には債券の元本償還及び利払いの確実性の程度をアルファベットなどの企業で示したものです。
格付けは、企業が債券発行時などに自社の格付を得るために格付機関に依頼を出す場合が大半ですが、多くの投資家から要請を受けて対象企業からの依頼なしに格付を行う場合があります。これを「勝手格付」と言います。
格付機関では、評価の見直し結果などを随時発表しているので、ホームページなどを通じて格付データを収集することが可能です。
格付は、上場企業クラスの企業のみが対象となっていますので、社数では99%以上を占める上場以外の企業を網羅することが出来ませんので、データの網羅性という点で問題はありますが、自社の取引先の大半が上場企業であればその情報を有効活用することが可能です。
D 各評価情報入手(評点、倒産予測値)
信用調査会社の信用調査や企業概要データなどの多くは、企業に関する何らかの評価情報が提供されています。帝国データバンクでは、1959年より100点満点方式の「評点」を提供しています。企業の信用度を測る指標として、多くの企業で採用されています。
帝国データバンク評点(以下、「TDB評点」と略)は、9個の信用要素を加算して合計点を算出する仕組みとなっています。信用調査報告書から抜粋した評点表は以下となります。
各信用要素の評価方法は次のようになります。
・業歴…現在の事業の経過年数で企業運営の継続性、堅実性を評価。
・資本構成…企業財務の安定性を自己資本比率で評価。
・規模…年間売上高、従業員数などの経営規模を評価。
・損益…前3年間の経常損益に法人申告所得を加味して評価。
・資金現況…売上増減(趨勢)、収益動向、回収状況、支払能力、資金調達余力等を評価。
・経営者…業界経験、経営経験、経営マインドなどを評価。
・企業活力…人材、取引先の良否、資本系列、生産販売力などを評価。
・加点・減点…調査時の状況により加点・減点。
このように多くの信用要素を加味した総合評価であることが、TDB評点の特徴になります。
一方で、帝国データバンクでは、企業が1年以内に倒産する確率の予測値を統計的モデルにより算出する「倒産予測値」も指標として提供しています。
倒産予測値は、企業の倒産リスクだけを判定する指標(数値)となりますが、確率の形式で提供されるため、一定の方法に基づいて、リスクを数値(量)で把握することが可能となります(倒産予測値を使用した10段階の格付である「予測値グレード」も同時に提供)。従って与信管理においては、倒産予測値を使用した方が精度の高い運用が可能となります(倒産予測値の詳しい内容については、こちらをご参照ください)。
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